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隆志さんのIIMC体験記

私は、6月下旬から約2ヶ月間、インドを旅行し、その最初の2週間をIIMCで過ごした。旅行に先立って、新聞記事でインド人母子の会の事を知り、代表の方にお会いして、インド人母子の会から、IIMCでボランティア出来る様に連絡を取ってもらったのだ。

IIMC では、初めゲストハウスに宿泊した。海外からやってくるボランティアのためにIIMCでは、カルカッタで地下鉄の南の終点駅、Tollygunj駅の近くにゲストハウスを用意している。ベッド数は8つである。ボランティアたちは毎日そこからIIMCのインドアクリニックまで通っている。オートリクシャーで約30分の道のりである。

私が滞在していた間も常時10人から多い時で20人くらいのボランティア達がいた。彼らは皆医学生や看護学生達で、ヨーロッパ等から来ている。ほとんどが女性だ。聞いたところヨーロッパでドクターはかなりが女性らしい。感心したのは、彼女たちが自立していて、自分の責任で判断して行動していることだ。彼女たちは、まず自分がどうしたいのか、どうするべきなのか考えて他人に聞く。日本人はその逆ではないだろうか。IIMCでは、ドクターとボランティア達で何度かミーティングが開かれたが、彼女たちは本当に率直に意見を言う。当事者として考える。

IIMCでは、カルカッタの郊外南部に位置するインドアクリニックで活動を行っている。その主な活動の1つにアウトドアクリニックでの診療活動がある。これは、インドアクリニックからさらに郊外にある3ヶ所のクリニックで週に1回か、2回診療を行っている。付近の子供や母親が診察を受けにやってきて、その処方箋に基づいてナースやボランティア達が、治療を行う。この時にはアウトドアクリニックの建物が患者でいっぱいになる。私は、なんの医療知識もないのだが、それでも多のボランティアに聞いて、傷口を消毒したり、軟膏を塗ったり、包帯を巻いたりした。でも一番困ったのは、会話も処方箋も薬品名もすべて英語だと言うことだ。

この事に限らずインドの公用語は英語だ。逆に言えば英語が話せれば、どこに行ってもなんとかなる。
アウトドアクリニックで一番感じたのは。農村で暮らす人々の「衛生観念の無さ」だ。傷口を汚れたままにしていたり、足の裏を怪我しているのに、はだしで歩いていたり、日本人だったら、習わずとも皆知っているような基本的な衛生知識が彼らには無いように見える。ちょっとした処置で防げたであろう病気が多く見られる。

これは基本的な教育が有るか無いかの差だと私は思う。子供たちや母親は文盲の人も多く、薬が有ってもその効能や使用法を読む事が出来ないのだ。

だから、IIMCでは、母親たちの識字教育や簡単な衛生、医療知識の教室も開いている。これらは診察の際に患者に説明しきれない事柄を補うものだし、長い目で見て、病気の発生率を減らすためのものだ。

IIMC では、小学校の援助として制服や教科書を用意したり、教員の給料を負担している。また、小学校兼ヘルスセンターの建設も進めている。インドでは、公立の学校が有っても、遠く離れていたり、家庭が貧しく、学用品が買えなかったり、家の手伝いなどの理由で学校に行けない子供が多い。

そういった教育を受けたくても、家計の事情で受けれない子供のためにスポンサーシップがある。子供たちの教育費を援助してくれるスポンサーを海外で探す活動である。日本人のスポンサーの援助を受けている子供の家をいくつか訪問したが、土の壁と、わらの屋根であるが、家族みんなで歓迎してくれ、この援助が本当に彼らに喜ばれていると感じた。

また、カルカッタから南へ列車とリクシャーで5時間ほどのベンガル湾の近くデゥーカポール村にあるシクシャ・サティ学校も見学した。周りには見渡す限りの田園が広がる村の学校である。教室に入りきれない低学年の生徒たちが、土の床の上に座って熱心に授業を受けているのが印象的だった。そして、その子供たちの元気さと人懐っこさ。この学校は以前に村人たちによって建てられたが、維持できなくなりIIMCの援助を受けているそうだ。

学校のすぐ近くには、IIMCの設置した地下水をくみ上げるポンプ小屋が有る。塩害のため、雨季しか米作が出来ないこの地域では、十分な水が有れば三毛作が可能になると言うことだ。

IIMC にいる間、二度ほど重症患者を公立病院へ連れて行く機会が有った。インドの公立病院は、治療費は安いが、絶対数が不足しているためいつも病院は患者でいっぱいだ。お金持ちは設備の整った私立病院に入る。お産で血液が足らなくなり、輸血が必要な患者に付き添って行った時も、診察してもらうまでに、いろいろ手続きをして待たされたし、病室に移ってもベッド数が足りないので廊下で待たなければならなかった。輸血用の血液も不足していて、いつになるか分からないと言う状態だ。日本の医療状態から比べるとひどいと言うしかない。

私は、IIMCでボランティアをした後、一ヶ月間インドを旅行したのだが、その経験からもこういった医療や、上水道、下水道、ごみ処理などの基本的な社会資本の整備がインドではいかに遅れているか思い知らされた。

IIMC のDr.マンダルの家に一週間泊まらせてもらった。彼は本当にエネルギッシュな人物だ。カルカッタの医科大学で学び、ベルギーに海外留学、帰国後、インドのカルカッタのマザー・テレサの施設で2年間働いて、IIMCを創設したそうだ。ヨーロッパや日本も何度か訪れている。Dr.マンダルは、「マザー・テレサの施設は、継続的であり変わらないものだが、IIMCは進展し、発展するものだ。」と、両者の違いを表現した。私は、IIMCの後、一週間ほどボランティアをしたのだが、その経験からもそう思う。「死を待つ人の家」では患者の治療は、基本的なことしかなされず、それよりも患者とケアを与える人たちとのつながりを重視する。患者たちは、最新の医療は受けられないが、心のこもった介護の中で満足して死んで行く。それは遅かれ早かれ死に行く人々にとって最高のケアなのかもしれない。

IIMCでは、子どもとその母親たちが対象だ。未来を持つ人たちのために、「より多くの人に、より多くの援助を目指しているのだ。

IIMCで私は色々な経験をする事が出来た。それらの経験を通じてインドで感じたり考えた事を、忘れず、発展させていきたいと思う。また、一人でも多くの日本人がIIMCやインドを訪れて、実際に見て、何か活動してみるべきであると感じている。

(1998年9月)