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真弓さんのIIMC体験記

2000年2-3月にかけて、5年ぶりにボランティアとして現地のクリニックを訪問しました。そこで私が見てきた現地の様子を、できるだけ皆さんにリアルに感じ取っていただきたいと思い、5年前の状態と比較してその進歩ぶりが解るように、ご報告いたします。

<写真1>

T 施設の拡大・充足

 既に御存知の方がほとんどであると思いますが、IIMCJはカルカッタ南部に、5つのクリニックを運営しています。5つのクリニックの位置関係は<図1>をご覧ください。

<図1>

 私が前回訪れた時には、テガリア(当時はソナルガウン)アウトドアクリニックと、掘っ立て小屋のようなチャクベリアアウトドアクリニック、そして建造中のインドアクリニックしかありませんでした。そのためアウトドアクリニックで診療を続ける合間に、インドアクリニックの開設準備に追われ、てんてこまいでした。(しかも地獄のような暑さの5月でしたので。)ベッドやシーツ、その他の備品の購入や、資金援助の依頼にDr.ブラモチャリーや他国のボランティアの方々と共に東奔西走していました。

 それが今回訪れた時、インドアクリニックは二階建ての立派な「病院」と変貌しており、私は門の前で一瞬呆然とした後、思わず、大喚声を上げてしまいました。似合いには、母親教室の部屋、ハンディキャップを持つ人の部屋、入院施設が増築されていました。また、増えたのは二階だけではありません。働く女性の職業訓練の棟や、ミーティングのためのいわゆる会議棟、自家発電施設、スタッフルーム、食堂なども造られ、インドアクリニックは、組織運営の基盤となる重要な建造物となっていました。簡単に、図面を書き留めてきましたので、<図2>をご覧になってください。Dr.ブラモチャリーの説明によると、二階部分は日本からの援助、会議棟はベルギーからの援助、自家発電機はスペインからの援助で完成したのだそうです。

<図2>

 私にとって、一番嬉しかったのは、食堂ができた事でした。以前昼食は、診療終了後にはるばる街まで戻って食べるか、昼食抜きでしたので、スタッフも皆喜んで居るように見受けられました。その上、飲料水を造る、濾過装置も設置されていたので、ミネラルウォーターが底をついても、危険な井戸水を飲まなくて済むようになり、安心して働けるようになりました。上下水道が完備されたことも、非常に嬉しかったです。

 私の滞在期間中に、インドアクリニックの入院ベッドが20床に達したお祝いのセレモニーがありました。(2000/2/28)。日本からは Senior Consul General of Japan の荒木氏が代表してスピーチ後、拍手を受け絵画を贈呈されていました。

 チャクベリアアウトドアクリニックは、大きく様変わりしていました。植物の葉で編まれた掘っ立て小屋から、煉瓦造りの建物になり、同じ様に学校も新設されていました。学校の生徒数は110人に達しています。スクールバスはなく、生徒達は公共バス、オートリクシャー、リクシャーなどに乗って、様々なところから通ってきます。学年はなく、同じような年代の子供達を集めて、授業は行われます。(写真2)

<写真2>

 ホゴルクリアアウトドアクリニックは広大な水田地帯の中にあります。はっきり言って水田以外に何もないところです。だからこそ診療所が必要な地域なのだと私は感じました。患者数は一日100人前後。ここもやはり4つの教室を持つ学校を併設しています。元気な子供達が笑顔で迎えてくれました。

 ケダアアウトドアクリニックは、最も新しくできたアウトドアクリニックで、私達が拠点とするテガリアからとても遠くに離れています。私達が診療した日は87人の患者さんが集まっていました。(写真3)

<写真3> Dr.ブラモチャリの診察

U 医療機器の充実

 何といっても、特筆すべきなのは、装備の充実です。テガリアアウトドアクリニックにはレントゲン室増設され、(写真4)患者を運んだりスタッフの移動に使う車は、オートリクシャー1台から、モービルクリニックのようなマイクロバスなど、3台に増えていました。(写真5)テガリアインドアクリニックには、冷蔵庫が数台置かれて、かつてのように薬品購入前に、市場でいちいち値段交渉して氷を買わずに済むようになりました。インドでは気温が高いため、要冷蔵の薬品はすぐに駄目になってしまうのです。パソコンが導入されていたのも、私には驚異でした。そしてそれを使えるスタッフがちゃんといるのです。何だかパソコンを持っていない私の方が、時代遅れのようでした。

<写真4>

<写真5>

 また、備品としては清潔なタオルが常備されるようになり、石鹸も普及しました。器械滅菌機も機能の良い新しく大きな物に付け替えられていました。乳児食を造るミキサーも購入されて、以前スタッフ全員で一日がかりの完全手作りだったのが、4人で短時間で作れるようになりました。(写真6)当時はすりこぎへら代わりのスプーンを使っていたのです。

<写真6>

 マテリアルの充実も素晴らしかったです。注射針、手袋、メスもそうですが、ガーゼ、テープなどの消耗品が比較的自在に使えるようになりました。以前はケチりにケチって使っていたのですが。でもまだまだ注射器や体温計など欲しいものが沢山あります。どうか皆さんの資金援助を宜しくお願いしたく思います。

V 組織の発展・機能化

 これについては実際インドに足を踏み入れた人にしか解りづらいと思いますが、敢えて書き記したいと思います。インドという国は一つの仕事をやりこなすのに、非常に労力も時間もかかる国です。何かを注文したとしても、余程せっつかない限り送ってこなかったり、買い物一つとってもよくよく自分で見定めてから交渉しなければなりません。また散々苦労して目的のオフィスへ行っても、たらい回しにされた挙げ句、オフィサーが不在とかで何の目的も果たせず徒労に終わることもあります。

 5年前、Dr.ブラモチャリーも組織のディレクターでありながら、診療をし金策や組織のとりまとめを行う傍ら、あちらこちらに出向かわねばならず、超多忙な日々を過ごしていました。彼は今も忙しいのですが、それは組織が大きくなったという理由で、面会やミーティングの時間が増えたからです。当時は病院で使う椅子やシーツの様な細々としたものを買うにも彼はわざわざ出掛けて、全てを取り仕切っていました。組織の結束が弱かった為もあるかもしれませんが、ディレクターがそんなことまで気を遣うことに、私は正直驚いていました。しかし今回見たところでは、彼にも多くの信頼に足る人ができるようになり、組織が強固になるにつれ、ディレクターとしての、仕事に専念できるようになったようでした。仕事の内容は細分化され、スタッフが皆与えられた仕事を誠心誠意実直にこなしており、分業で組織は飛躍的に拡充しました。おかげでどのプロジェクトも効率的に進み、随分と機能的になったと思います。(あくまでこれは私の実感ですが。)

W 学校教育の推進

 IIMCで行っている教育の段階を挙げますと、
プライマリー(小学校)がT-Wまであり、10歳までの子供達が通っています。
セカンダリー(中学校)はX-]まで6年あり、16歳までの子供達が通っています。
それ以上は、ハイアーセカンダリー(高校)があり]T・]Uの2年間、18歳のまでの子供に教育を受けさせます。18歳以上は学力のある子供達が希望して大学に進むことができます。

 今スポンサーシップを受けている子供達は、殆どきちんと学校に通っており、家庭の事情などで通えなくなった子供は僅かです。私はこの機会に私自身がスポンサーになっている子供に会い(写真7)、家と家族を訪問しました。スポンサーを受けている子供達の家はどれも粗末なもので、植物の葉で編んだ壁に瓦屋根が積んであるものでした。家族一人一人の部屋は狭く、電気もなく暗かったです。モンスーンの時期は雨漏りがし、どの家も困るとのことでした。

<写真7>

 しかし子供達の笑顔には屈託がなく、純朴で素直な子供達ばかりでした。それを見ていて、私もスポンサーの一人として、ずっと子供を援助していこうと心に固く決めました。スポンサーはいつでも募集中です。スポンサーなってくれる方がより一層増えることを祈るばかりです。

X 保健衛生の推進・検診活動

 IIMCでは、診療以外に、母親と乳児の健康を守るために、日本で言う保健所の役割をも担っています。子供が生まれると、(自宅出産が多い)、カルテを作成し、成長過程の記録をつけていきます。そして栄養が不良であれば、私達の作った乳児食を渡し、様子を見ます。この乳児食を与えられて栄養不良を脱した乳児は沢山います。<表>にあるのはその顕著な例です。色付きの部分が理想的な発育の乳児の体重ですが、折れ線グラフで示される2人の身体は著しく小さいことが解ります。しかし乳児食を与えることによって、体重は確実に増していきます。カルテは乳児が8ヶ月になるまで記録され、病院いかかることがあれば貸し出されます。現在は800人分のカルテがIIMCで保管されています。

 乳幼児検診は、3歳(子供によっては5歳)まで行われます。

<表1>

 また、政府と提携して、予防接種もIIMCで施行しています。これをEPI(Extended Program of Immunsation)といいます。ポリオ、BCG、麻疹、DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風の三種混合ワクチン)の注射をIIMCでは行っています。5年前は破傷風のワクチン接棯主でしたが、様々な予防接種を行うになってからは、子供達に予防接種を受けさせるため、大勢の人がクリニックを訪れます。(写真8)

<写真8>

Y 衛生観念の普及・医療への関心の向上

 これは私感でしかないのですが、以前に比べて現地の人々がかなり病気に対して医学的な理解をしてくれるようになったと思います。前回の訪問時、私達は彼らの教育水準の低さからくる、衛生は医療についての基本的な知識の欠如に悩まされました。腫れ上がった傷を何日も放置し相当悪化してから来院する人や、皮膚病の肌の傷の上にお守りをきつく縛りつけてくる子供が多かったのです。また「子供が痛がっているから、治療を止めてほしい」「子供が痛がっているのを見ていられない」と、子供をかばい処置に拒否的な態度を示す母親達もいました。IIMCの活動は治療を通して、医療というものを理解してもらうことでもあったのです。それは5年前にとても苦労した重要な課題でした。

 しかしスタッフの地道活動が功を奏したようで、現地の人々、とりわけ母親達の医療の受け入れが格段に良くなっていました。今回、短い間だったのですが、私は処置に拒否的な態度をとる母親を一度も見ませんでした。検診や、母親学級に来る母親達の表情を見ても真剣で、積極的に医療を受け入れる雰囲気が伝わってきました。

 こういった意識改革は、海外からの支援だけではどうにも難しかったと思います。現地をよく知る現地のスタッフの努力と工夫があって初めて成しえたことだと、感嘆しました。

<写真9> 傷の治療

Z 女性への地位向上支援

 5年前には全く手が着けられていなかった計画がこれだと思います。日本にいて話には聞いていましたが、その背景にあるものを私は全く知らなかったのです。インドの社会では女性の地位が低く、銀行の口座も作れなければ、お金も借りることができないのです。そこで行われているのが、IIMCの地方の女性に経済的権利を与える計画(Economic Empowerment Program for Rural Woman)です。既に「マイクロセービング&マイクロクレジット」としてニュースレターに載ったことがありますが、それは次のような内容です。

<写真10> クリニックで受診を待つ人々

 同年代の同じような境遇の女性達を集めて5人組にします。このグループの中で、主任と書記と会計を決めます。そしてこの5人組の小さなグループを4つほど寄せ集めて20人のグループにします。それぞれが少額のお金しか持っていなくとも、20人ともなるとある程度のまとまったお金が集まります。それを預金するのです。主任や、書記、会計は誰がどのくらい預金しているか、または借りているか、支払いは滞っていないかチェックしています。女性達は連帯責任によって、互いに借りたお金などが滞納しないようになっています。彼女達は週に1度集会を開き、問題がないか話し合いをします。長い間預金をすると、利息が彼女達の手に入ってきます。また、お金を借りたい時も、100Rpあれば1000Rpのローンを要求することができます。

 この計画は現地のIIMCも力を入れており、これからもっと拡大していくことでしょう。

 それからIIMCは働きたい女性を対象に、縫い物をさせて技術を養成し、それを売店で売っています。私の見た限りでは、皆生き生きとした笑顔で仕事に取り組んでいました。(写真12)インドでは裁縫といえども男性の職人さんが多いので、このように女性の職業訓練の場があるのはいいことだと思いました。

<写真12>

 春木からの報告は以上で終わりです。日本でIIMCの計画に賛助いただいている方々に、現地の様子が少しでも身近に感じられ、支援が着実に実っている喜びをお運びできたら幸いと思っています。有り難うございました。

2000/4/2